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『宇宙』事業推進のために地域と協働する“ふくいPHOENIXプロジェクト”シンポジウム
『宇宙』事業推進のために地域と協働する“ふくいPHOENIXプロジェクト”シンポジウム

SPECIALNEW 福井工業大学 私立大学研究ブランディング事業 『宇宙』事業推進のために地域と協働する
“ふくいPHOENIXプロジェクト”シンポジウム2020.03.04

2020年2月15日、福井駅西の複合施設「ハピリン」内にあるセーレンプラネット(福井市自然史博物館分館)ドームシアターで、『福井工業大学 私立大学研究ブランディング事業『宇宙』事業推進のために地域と協働する“ふくいPHOENIXプロジェクト”シンポジウム』が行われました。

文部科学省より、平成28年度に採択された「私立大学研究ブランディング事業」である当プロジェクトの総仕上げとなるシンポジウム。会場には、本学学生、関係者、一般参加者など約140人が詰め掛けました。

福井工業大学の掛下知行学長

冒頭、福井工業大学の掛下知行学長が主催者を代表してあいさつ。プロジェクトをここまで支援してくださった関係者にお礼の言葉を述べるとともに、「宇宙を通して福井の将来を考える機会になれば」と来場者に呼び掛け、「宇宙とICTによるイノベーションを福井に起こしたい」と力を込めました。また、文部科学省高等教育局私学部私学助成課、内閣府宇宙開発戦略推進事務局、福井県産業労働部よりお招きしたご来賓の皆様によるあいさつもあり、プロジェクトの今後について期待の声をたまわりました。

プロジェクト概要の説明

研究成果発表では、はじめに本プロジェクトリーダーの池田岳史副学長がプロジェクトの概要を説明し、中城智之教授(電気電子工学科)、下川勇教授(建築土木工学科)、青山隆司教授(電気電子工学科)がそれぞれ、A軸(宇宙研究)、B軸(観光文化研究)、C軸(地域振興研究)の成果を報告。スライドは会場の半球状スクリーンに投影され、来場者は夜空に包まれるような感覚で発表に耳を傾けました。

池田副学長は、エンゼルランドふくい(福井県児童科学館)や福井県立恐竜博物館などとの地域人材育成の取り組み、ウェブサイトや情報誌『Soracara』など外部への情報発信の取り組み、自己点検評価・外部評価などについても発表。本プロジェクトの成果を継続的に発展させる新事業と、事業を後方支援する『FUT AI&IoTセンター』(2019年4月開設)の紹介もありました。

辻野晃一郎

休憩を挟み、後半は特別講演とトークセッションでプログラムを展開。特別講演では、ソニー、グーグル日本法人などを経て、アレックス(東京都品川区)代表取締役、ウェザーニューズ(千葉市美浜区)社外取締役などを務める辻野晃一郎氏をお招きしました。演題は「人工衛星データを活用したIoT時代の到来」。約1時間の講演で、宇宙ビジネスの最新動向や、ウェザーニューズ社の自社衛星活用事例などを解説していただきました。

辻野氏は、人類初の有人宇宙飛行に成功したガガーリンを引き合いに、「宇宙に浮かぶ地球の写真を部屋に張ってライトアップして疑似体験をしていた」と宇宙へ憧れたきっかけを紹介。かつて在籍したグーグルを「宇宙からの地球を見るような視点で仕事をしている人たちの集団」と評し、グーグルアースに初めて触れた時のことを「PC上で地球を動かす技術に衝撃を受けた」と振り返りました。

また、「現在は技術主導の時代で、人工知能やロボティクス(=ロボット工学)などの技術はインターネットの普及に足並みを揃えるように発展している」とし、IT分野の資金が宇宙に流れている背景について「最先端のIT企業はインターネットそのものを宇宙に拡張しようとしている」とも解説。

人口知能、ロボティクス

「宇宙産業は宇宙開発から宇宙ビジネスのフェーズに入っている」とした上で、本学が手掛ける『FUT-SAT』のような超小型人工衛星についても言及。「機器の低廉化、取得したデータのオープン化などがさらに進む。衛星データが身近になる、人、車、家畜などの動き、農地のモニタリングなど、衛星データを活用して人間の活動を最適化する社会がやってくる」としました。

トークセッション

トークセッションでは、辻野氏、本学のプロジェクトメンバーに加え、JAXA(宇宙航空研究開発機構)の宇宙飛行士を目指して活動するタレント・黒田有彩氏が登壇。宇宙、人工衛星、科学、観光など多岐な話題で約1時間のトークを繰り広げました。

-福井工業大学では超小型人工衛星を使ったさまざまな取り組みを行っています。人工衛星を使った研究の魅力とは何でしょう。

中城「醍醐味はものづくりの基本を味わえること。リモートセンシングが出自の私が人工衛星を作ることになるとは、20年前には思いもよらなかった。Linux、TCP/IPなど、手慣れたシステムとの親和性が高いのも面白く、いい時代になったと思います」

-人工衛星の技術発展とともに注目する活用法についてご意見をお聞かせください。

黒田「エンターテインメント要素を取り入れた生かし方に注目。東京にある『エール』という日本の宇宙ベンチャーは衛星から人工流れ星を流すプロジェクトに取り組んでおり、実現したらいったいどんなふうに見えるのだろうとワクワクしています」

辻野「大航海時代に人類が新大陸を目指したように、人類が宇宙に出て行くのは自然な流れだと考えます。エンターテインメントと旅行とを掛け合わせた時代の到来を見越して、アメリカのホテル王は宇宙でもホテル王になることを目指していると聞きます。まさに人類の活動範囲が宇宙に広がっています」

-福井での宇宙研究について、今後どのようなことを予定されていますか。

池田「宇宙と一口に言ってもさまざま切り口があり、本学として『学生をどのように楽しく導くか』を主眼に事業を進めていきます。人工衛星はそう簡単に作れるものではないが、本学に来ればそういう活動に携われるということを継続的に発信していきたいです」

-プロジェクトB軸(観光文化研究)における星空ツーリズムなど、宇宙をキーワードにした観光についての感想をお聞かせください。

黒田「アメリカのNASA関連施設にはミュージアムがあり、月の石やサターンVロケットなどが展示されています。解説文は英語ですが、展示物の規模に圧倒されたり、本物からあふれるエネルギーを感じたりしました。こうした『本物の力』というのが、観光の中のハイライトになるのではと思います」

-先ほどの記念講演を踏まえ、IoTと観光との関わりについてアドバイスをいただけますか。

辻野「福井工業大学は宇宙をターゲットにさまざまな成果を挙げており、東京一極集中の現状を打開する地域振興のロールモデルになるのではと期待しています。テック(tech=技術)を一つの起爆剤に、『スマート○○』『○○テック』という仕組みをどんどん作ってPRし、いい人材を集めるきっかけにすればよいと思います」

池田「B軸のスターツアーは一つの実績となりました。星空の美しさは福井の人にとって日常の風景になっており、そのよさを再認識してもらうには星空の美しさを改めて数値化する必要があると感じます。スターツアーの反響で星空ツーリズムの芽生えは感じており、引き続きイベントを続けていきます」

-他方で、天候不順の場合のコーディネートが課題になりましたね。

池田「たしかに最重要課題です。星が見えないときに備えて、食や文化などの地域資源を組み合わせたパッケージも作っていきたいです。衛星データを活用すれば、ツアー当日に星が見えるか否かという予測も立てられるのではないかと期待しています」

-衛星データを地域活性化に生かす場合のヒントがあればお聞かせください。

辻野「宇宙を対象にすると言っても大がかりな基盤が必要でないこともあります。フリーで手に入るデータを活用し、できるだけ手軽に取り組むという手法もあるのでは。若い人たちが、既存のデータを活用し動いている事例もあります」

黒田「国立天文台のある東京都三鷹市では『太陽系スタンプラリー』を行っています。三鷹駅を中心に街全体を太陽系に見立てたエンターテインメントイベントで、市民も誇りに感じているようです。10年続いており、天文台のある街にちなんだ地域振興の好例ではないでしょうか」

-福井工業大学としては今後どのような地域貢献を考えていますか。

中城「誰も考えつかないようなデータ活用の手法を提示していきます。あわらキャンパスのパラボラアンテナや、FUT-SATなどインフラの整備も進め、オープンでフリー、かつ他の事業者などが出せないデータを提供する方針で地域に貢献したいです」

辻野「誰でも使えるデータを提供する場合、差別化をいかに図るかが鍵になります。『ローマ法王に米を食べさせた』として知られる石川県羽咋市神子原の事例では、『宇宙×米』のブランディングが大きな力となりました。地域振興に当たっては、ビジネスモデルをプロデュースできる人材の育成も課題となるでしょう」

-ふくいPHOENIXプロジェクトのさらなる展開や『FUT AI&IoTセンター』など、今後の福井工業大学の取り組みについて期待の声をお聞かせください。

黒田「将来、人類が当たり前のように宇宙に行くようになれば、宇宙空間での衣食住も合わせて考える必要が出てくるでしょう。科学者以外の人たちも広く宇宙に関われる時代の到来に備え、福井がどのように差別化を図っていくか。福井工業大学がその基盤となることを期待し応援しています」

池田「本学の取り組みをより多くの人に知ってもらうことは大切で、本学のデザイン学科がその発信源となれる可能性を持っています。本学の特色とさまざまな分野の組み合わせも重要だと考えており、『FUT AI&IoT センター』を軸に地元の人たちとさまざまな取り組みを進めていきたいです」

辻野「私がかつて在籍したソニーは当時、今で言うGAFAのような勢いを持っていました。今の日本は世界の中でのプレゼンスが下がっている感があり、改めて外向きのエネルギーが必要と考えます。宇宙は外向き、いわばグローバル化の究極とも言え、その拠点が福井ということになれば日本の元気の源になるのではと大いに期待しています」

多くの方々がおいでくださり、“ふくいPHOENIXプロジェクト”の総仕上げとなるシンポジウムは盛況のうちに終了しました。本プロジェクト開始から今日まで円滑な運営を支えてくださった関係者のみなさまに、この場を借りて改めて御礼申し上げます。

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